建設業の技術トレンドのうち、今後5年で自社の受注・施工能力に響くのは何でしょうか。本稿では2026年10月時点の公的資料や企業の発表を基に、2031年頃までのデータ連携、AI、遠隔・自動施工の変化を考えます。建設会社の経営層・管理職に向けて、各技術が仕事と競争条件をどう変え、建築・土木・専門工事で影響がどう異なるかを整理します。
この記事のポイント
業界全体への影響の広さという点で、本稿は「工程をまたぐデータ連携」を重視します。設計、施工、検査、維持管理で情報を引き継げることは、特定の作業だけでなく、複数の工程や企業の連携に関わるためです。AIによる情報処理の支援と、遠隔・自動施工による物理作業の変化も、この情報基盤との関係から捉えると、それぞれの役割が見えやすくなります。
国土交通省のi-Construction 2.0の取組でも、施工、データ連携、施工管理のオートメーション化を三本の柱としています。これは建設業の長期的な変化を示す政策の方向であり、今後5年での普及や個別企業の効果を保証するものではありません。

BIM/CIMで注目したいのは、モデルを作成することから、その情報を次の工程で活用することへの広がりです。モデルの精細さに加え、設計時の情報が施工や検査、維持管理でどう使われるかが、価値を考える軸になります。
制度面では、国土交通省の建築BIM推進会議ページが、2026年4月1日のBIM図面審査開始と、同年9月のBIMデータ審査に関する基本構想の公開を掲載しています。建築確認でもデータ活用を広げる方向が示されていますが、開始済みの図面審査と今後の構想は区別して捉える必要があります。
業務面では、例えば設計変更の内容を施工記録や検査に引き継げれば、担当者が工程ごとに変更箇所を照合し直す負担を減らす余地があります。今後は情報を提出できることに加え、関係者が変更を追い、次の仕事に活用できることが重要になると考えられます。そのためには、誰が情報を更新し、誰が利用できるかを明確にすることが前提です。
この変化は、BIMを新規導入する企業だけに関わるものではありません。既存の原価・工事管理と情報をつなぐことも検討対象になります。こうした業務システムの実装領域は、Yopazのシステム・アプリ開発でも扱っており、連携範囲は既存製品の仕様や契約に応じて確認します。
AIと現場データの活用では、文書や知識を探してまとめる仕事と、現場の状態を捉えて確認対象を絞る仕事の二つに注目できます。情報処理や観測を支援する技術が広がることで、人が時間をかける作業の配分も変わると考えられます。
記録の要約、報告書の下書き、承認済み資料からの検索は、生成AIの活用候補です。こうした支援により、担当者の仕事の一部は、情報を一から探してまとめる作業から、提示された内容の根拠や対象工事への適合性を確かめる作業へ移ると考えられます。施工計画や安全に関わる利用では、参照した資料とその版を人が確認できることが前提です。
大林組技術研究所の2025年の報告では、汎用的な大規模言語モデルの専門知識や誤情報の課題に対し、建設分野に特化したモデルの構築を扱っています。業界固有の知識を扱うための研究が進んでいる一例ですが、現場全体での効果や計画の自動承認を示すものではありません。
写真や計測値を工区・部材・時刻と結び付けると、現場の変化を把握する手掛かりになります。画像解析などで確認候補を絞れれば、人が現場や記録を一律に見て回る仕事から、変化や異常の兆候がある対象を重点的に確かめる仕事へ、配分を変える余地が生まれます。
そのためには、判断に使える新しさでデータを保ち、通知を受けて誰が確認するかを定める必要があります。解析結果には見逃しや過剰な通知もあるため、人の確認につながる仕組みとして捉えることが重要です。
関連記事: 建設業のAI活用はどこまで進んだ?国内外の事例と判断基準
遠隔操作は、人が機械を操作する場所を変えます。一方、自動・自律施工は、機械が担う作業や判断の範囲を広げます。今後5年の変化を考える際は、どの操作を機械に任せ、どの仕事を人が担うかという分担に注目する必要があります。
コマツの2026年6月の発表では、油圧ショベルの遠隔システム仕様と対応する操作システムの販売開始が示されています。人が離れた場所から操作しながらICT施工機能を使う構成であり、遠隔操作と施工支援を組み合わせた商用提供の一例です。
自律化を後押しする動きとして、国土交通省は2026年9月に建設分野のフィジカルAI戦略の中間とりまとめを公表しています。データの整備や安全性の評価など、技術開発と並行して共通条件を整える方向が示されています。実際に適用できる作業の範囲は、個別の技術と現場条件に応じて見極める必要があります。
経営上の論点は、操作する人だけでなく、現場の確認や例外対応を担う人をどう配置するかにもあります。安全な監視・停止を確保できる範囲で機械に任せる作業が広がれば、人が集中すべき仕事も変わります。今後5年は、案件ごとに進むこうした分担の変化を、自社の施工体制に照らして捉えることが重要です。
同じ技術でも、設計変更の多さ、作業の反復性、情報を受け渡す相手によって、自社への影響は異なります。以下は案件や役割の特徴から見た比較です。維持管理・改修は建築と土木の双方に関わるため、自社の仕事に重なる行を手掛かりにしてください。
| 自社の主な案件・役割 | 注目したい領域 | 仕事への影響 |
|---|---|---|
| 設計変更や調整先の多い建築 | BIM情報と施工記録の連携 | 関係者が同じ変更情報を追えることで、工程間の照合や調整の負担を減らす余地がある |
| 反復作業のある土木 | 遠隔・自動施工 | 作業条件が合う範囲で、人を配置する場所や機械に任せる作業が変わる |
| 案件ごとに現場が変わる専門工事 | 記録の標準化とAI支援 | 元請けごとに異なる提出・確認業務を整理し、情報を探してまとめる仕事を支援できる可能性がある |
| 維持管理・改修を担う事業 | 画像・センサーと履歴の連携 | 過去の記録と現在の状態を結び付け、重点的に確認する対象を絞る手掛かりになる |
このように、自社にとって重要な変化は、技術の話題性よりも、どの仕事や役割に影響するかによって見えてきます。そのうえで、研究・実証と商用提供の違いを確かめ、現場や協力会社も含めて使い続けられるかを見ます。政策目標や他社の成果をそのまま自社の効果と捉えず、確認・維持にかかる負担も含めて判断することが重要です。
関連記事: 建設業DXが進む企業の共通点は?組織・データ・人材から読み解く
今後5年の建設業では、データ連携を共通基盤として、AIと遠隔・自動施工が仕事の分担を変えていくと本稿は見ています。こうした変化を捉えるには、個々の技術だけでなく、情報や仕事が関係者の間でどう引き継がれるかにも目を向けることが重要です。
Yopazは、業務・データの整理やAI活用の検討、既存システムとの連携を支援します。設計情報と現場記録の受け渡しに課題がある場合は、現在の業務・システムと改善したい点を整理するところから、Yopazへご相談ください。
A.自社でモデルを作らなくても、必要な情報を受け取り、施工記録を返す負担が大きければ検討する価値があります。まず元請けが求める閲覧・記録・提出の範囲を確認し、専用ソフトの保有が必要かを分けて判断します。
A.工程をまたぐ情報活用には、元請けだけでなく協力会社が記録を渡し続けられることも必要です。元請けの確認が減っても、協力会社に入力負担だけが増えれば連携は続きにくくなります。データの形式とともに、負担と利益の配分が普及を左右する条件になります。
A.データを外部で使える範囲が、AIや他システムとの連携の選択肢を左右します。全面更新が直ちに必要とは限りませんが、出力形式と契約上の取得権限は確認したい点です。制約がある場合は、次の更新・再契約で見直す要件になります。
A.保有機の更新時期だけで遅れを判断する必要はありません。対象工事でレンタルや外部委託を通じて機能を利用する選択肢もあります。自社の施工で必要になる能力と、その調達方法を分けて考えます。