建設業のAI活用は、設計案の比較、施工進捗の把握、過去のプロジェクトに蓄積した知識の再利用へと広がっています。ただし、対象業務が違えば、必要なデータも活用の仕組みも異なります。本記事では、建設会社の経営層・部門責任者に向けて、国内外4社の公式情報から、何にIT・AIを使い、どの業務を支えているのかを比較します。各事例の違いを踏まえ、自社が参考にできる方向を整理します。
この記事のポイント
国内外4社の事例を、支援する判断とデータ・ITの接点から比較します。
| 企業・対象 | 主に支援する判断 | データやITの接点 |
|---|---|---|
| 大林組・AiCorb | 初期設計の案を比較する | スケッチ、3Dモデル、設計プラットフォーム |
| 清水建設・造成工事 | 運土の進捗を把握する | 計測、位置情報、クラウド |
| Skanska USA Building | 過去知識を計画・リスク検討に使う | プロジェクトの知識、AI支援ツール |
| Balfour Beatty | 会社横断の情報を業務に生かす | データレイク、デジタルツール |
各社の公表情報を整理したものであり、国別の普及率や企業の成熟度を比較する表ではありません。
関連記事: 建設業のバリューチェーンはどう変わる?価値を生む役割の変化
大林組が2022年に公表したAiCorbの開発発表では、スケッチや3Dモデルを入力して複数のファサード案を生成し、設計プラットフォームHyparとの連携で3Dモデル化する仕組みを示しています。
こうした案は、顧客と要望や優先条件を話し合う際の具体的な材料になると考えられます。ただし、生成された外観案は検討材料であり、構造・施工性・法令などの条件を満たす最終設計を確定するものではありません。
清水建設のShimz-Smart-Site Analyzerは、造成工事の土砂運搬をデータとして捉える仕組みです。ダンプトラックに取り付けた3D LiDARで積載土砂の有無を計測し、AIで荷降ろしの状態を判定します。位置情報などをクラウドで統合し、車両ごとの運土量やエリアごとの進捗率を可視化すると説明されています。
管理者が運搬の状況をエリアごとに把握するための施工管理支援として位置付けられます。
関連記事: 建設業界の主要プレイヤーはどう戦略を変えているのか?
Skanska USA Buildingの2026年の発表では、Expert SidekicksやSkanska Metriks Cost Modelingを通じて、蓄積した知識を安全・業務リスクの把握や計画、意思決定に生かしていると説明しています。データ、AI、新技術の機能を担うデジタル推進組織を事業運営の中に置き、プロジェクトを支援する体制です。
2024年に始まったSidekick群は、1,000人超の従業員が利用し、500件超のプロジェクトに関わる業務を支援する規模へ広がったと報告されています。過去のプロジェクトで蓄積した情報や知識を、複数のプロジェクトで再利用する取り組みと読めます。なお、公表された利用規模は、案件当たりの利益改善や事故削減を直接証明する数値ではありません。
英国のBalfour Beattyは、公式のDigital-firstの説明で、2018年にデータレイクを設けたとしています。さまざまな形式のデータをまとめて蓄える基盤であり、同社はこれをデジタルツールに活用しています。
AIについては、この基盤と連携できる独自の安全なAIアシスタントを試行していると説明しています。データ基盤の活用とAIアシスタントの試行は異なる段階であり、この記述からアシスタントの全社本番展開を判断することはできません。
公表事例に共通するのは、情報や候補を、設計の検討、進捗の把握、計画などの具体的な仕事に役立てようとしている点です。技術名だけでなく、情報の取得・共有、AIによる支援、人による判断の関係を見ると、各取り組みの狙いを捉えやすくなります。

情報の用意の仕方: 過去の資料・知識の再利用、現場での新たな計測、データをまとめる基盤の整備など、取り組みによって必要な準備が異なります。
活用の範囲: 設計案の比較や運土の把握など、特定の業務を支える活用と、プロジェクト・部門を越えて知識やデータを使う活用があります。
これは紹介した取り組みの重点の違いであり、各社全体や国別の成熟度を評価するものではありません。
関連記事: AIエージェントとは?ビジネス活用の基礎と最新動向
他社と同じツールを選ぶ前に、自社の仕事と照らして次の三点を整理すると、参考にする方向を絞りやすくなります。
例えば、報告の集計に時間がかかる場合と、集計後も状況を判断しづらい場合では、見直す工程が異なります。どちらも「AIで効率化したい」とまとめず、仕事が止まる場面を分けて考えることが、事例を自社に引き寄せる出発点になります。
関連記事: 建設DXで収益モデルはどう変わる?工事の粗利改善と継続収益の条件
国内外の事例を参考に、自社の仕事や条件に合う仕組みを見極めることが、活用の方向を絞る出発点になります。
Yopazは、業務・データの整理からPoC設計、既存システムとの連携まで、AI活用の具体化を支援しています。判断に時間がかかっている業務、現在使っている資料・システム、改善したいことを添えて、お問い合わせください。
A.参考にできます。大手の投資額や専任体制をそのまま基準にせず、自社でも課題になっている仕事にどの仕組みが役立ちそうかを見ると、参考にする範囲を絞れます。
A.検討できます。文書検索や集計補助など、BIMモデルを前提にしない用途もあります。BIMの有無だけでなく、対象業務に必要な情報が利用できるかで判断します。
A.日本語の図面・帳票や業務上の区分に対応できるか、データの提供・保存・アクセス管理が自社の条件に合うかを確かめます。公開デモだけで判断せず、利用許可のある代表データで適合性を確認することが大切です。