自社でもDXに取り組むべきか。検討の手掛かりとして、先行する建設会社の取り組みを参考にすることがあるでしょう。しかし、各社では事業規模や工種、抱える課題が異なるため、個別の事例を読んでも、自社に参考になる点を整理するのは簡単ではありません。本記事では、国土交通省と企業の公表資料をもとに、先行施策から読み取れる特徴を整理します。その際、導入した技術だけでなく、経営の目的と現場の業務を、データや人材を通じてどう結び付けているかに着目します。
この記事のポイント
国土交通省のICT施工StageⅡは、現場の活動をデータで可視化し、その情報を基に人員や資機材の配置を見直すなど、現場の最適化による省人化を目指しています。情報を見えるようにすることに加え、施工の判断に活かすという方向です。これは主に土木施工の施策であり、建設業全体の企業成熟度を認定する基準ではありません。
企業の取り組みでは、清水建設の中期DX戦略〈2024–2026〉を含むDX方針が、業務プロセス改革とデータを活かす経営に加え、組織横断のDX体制、人材育成、データをつなぐ基盤を示しています。技術の導入と、それを支える組織・人材を一緒に扱っている点が読み取れます。ただし、戦略の公表は、その目標が全現場で達成された証拠ではありません。
国土交通省の令和7年度インフラDX大賞の発表では、有効性・先進性・波及性を評価し、同年度は特に波及性を重視したとしています。個別の取り組みの成果に加え、その成果が広がる可能性も評価の対象になっています。
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自社と比較するための観点は、目的と責任、再利用できるデータ、現場を支える人材、横展開の検証という四つです。以下は公表施策をもとに本記事が整理した分析軸であり、すべての先行企業が同じ仕組みを備えていると断定するものではありません。

改善したい指標と、業務を変える権限を一緒に置くことが出発点です。「報告を速くする」なら、入力担当者の操作だけでなく、誰が報告を使い、どの確認を減らせるかまで決めます。例えば、電子化した日報に本社向けの転記も残す運用では、現場の入力が速くなっても全体の負担は減りにくくなります。これは仕組みを考えるための例であり、特定企業の実績ではありません。
本社は共通の情報項目や確認ルールを決め、現場は工種・施工条件に応じた例外を判断する、といった責任の切り分けが考えられます。例外を認める範囲と、本社へ戻して判断する条件が曖昧だと、標準化を進めるほど調整が増えるおそれがあります。経営層の関与を確認するときは、会議への参加回数より、こうした業務変更を決める人が明確かを見ます。
建設DXのデータ連携では、情報の形式に加えて、何の判断に使い、誰が更新するかをそろえることが判断材料になります。工事や作業の識別、更新時点、確認済みかどうかが分からなければ、複数の画面を接続しても利用者による照合が残ります。
例えば進捗情報を工程調整に使うなら、入力の速さと同時に、調整時点で必要な粒度と鮮度を確認します。全情報を一つのシステムへ移す前に、判断に不可欠な項目を決めれば、連携の対象を絞れます。既存のシステム・アプリの開発や改修を検討する場合も、この整理が要件を伝える土台になります。
項目を統一すれば比較しやすくなる半面、工種ごとの違いを失うおそれもあります。共通項目と現場固有の補足を分け、どこまで比較可能なのかを示す設計が現実的です。
業務を知る人とITを扱う人が、導入後の問題を共同で扱える体制が、改善を続ける支えになります。操作研修を実施しても、入力項目が実際の業務に合わない問題や、既存帳票を廃止する判断までは解決しません。現場の要望を業務変更やシステム改修へつなぐ役割が要ります。
担当者を置く際は、通常業務に追加で任せられるかも確認します。問い合わせ対応、設定変更、後任への引継ぎまで特定の一人に集まれば、その人の異動で運用が止まるリスクを抱えます。自社で決める業務上の条件と外部へ依頼する範囲を整理したうえで、計画から導入・運用を扱うITコンサルティングなどの支援を検討できます。
建設DXを横展開する際は、試した現場の条件と、次の現場で増える作業を残しておくと判断しやすくなります。工種、工事規模、通信環境、協力会社の体制が違えば、同じ仕組みでも準備や確認の負担が変わるためです。
効果の確認では、対象作業の時間に加え、入力、修正、照合、問い合わせへの対応も含めて比較します。安全や品質の確認が維持できるか、例外が生じた際に戻れる手順があるかも、適用範囲を決める条件です。現場の工夫を広げるために必要な支援が大きければ、全社導入を急がず、対象を絞る、設計を変える、展開を見送るという選択も残せます。
先行企業の取り組みを参考にする際は、自社で改善したい業務と、その改善によって得たい変化を起点にすると、参考になる点を絞りやすくなります。次の三つの問いで整理してみてください。
例えば、現場から本社への確認待ちを減らし、工程調整を早めたい会社を考えてみます。必要な情報が揃っていても判断が止まるのであれば、「業務変更の責任者が明確か」という観点が手掛かりになります。
ただし、先行企業と自社では、現場に任されている判断の範囲や本社の支援体制が異なる場合があります。その違いを踏まえ、誰の確認が必要で、どこに待ち時間が生じているのかを確かめることが、次の検討につながります。これは考え方を示す例であり、特定企業の実績ではありません。
こうした問いを現場と管理部門で共有し、自社で改善する必要性と、DXが役立つ可能性のある範囲を話し合う材料にできます。
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先行企業の取り組みは、自社の課題や条件との違いを踏まえて読むことで、DXを検討する判断材料になります。
Yopazは、対象業務の目的と現場・本社間の情報の流れを整理し、既存システムとの連携や改修の検討を支援します。
課題がまだ整理できていない段階でも、対象となる業務やお困りの点を添えてお問い合わせください。
A.参考にできますが、試験環境と日常運用を区別して読みます。通常より手厚い支援や、対象外にした作業がないかを確認してください。導入効果が公表されていても、自社で同じ結果を得られるとは限りません。
A.一律の置き換えを急ぐより、共有する情報と受け渡し方法を先に決めるのが現実的です。既存ツールからの出力や入力窓口の共通化なども候補になります。追加の契約・費用・教育負担を誰が担うかを合意し、参加が難しい会社への代替手段も検討します。
A.改善の目的、業務の優先順位、変更の承認、情報へのアクセスを認める範囲は、自社の責任者が判断できる状態を保ちます。設計や開発を依頼する場合も、その判断根拠と運用条件を委託先へ伝えます。契約終了時に設定やデータを引き継げるかも、依頼前の確認事項です。