建設業界の主要プレイヤーは、どのように戦略を変えているのでしょうか。変化を捉えるには、進出する市場だけでなく、受注方針や事業の組み合わせ、それを支える人財・組織にも目を向ける必要があります。本記事では、大林組と清水建設の公表方針を例に、戦略の重点がどこに置かれ、どのように具体化されているかを読み解きます。両社の事例は業界の動きを考える手掛かりとして扱い、業界全社の比較や競争力の順位付けは行いません。
この記事のポイント
戦略の変化を捉える際は、成長を目指す市場や事業に加え、受ける仕事の選び方、現在の事業を支える能力、組織・人財の配置を見ます。経営資源の配分は、これらの方針を実行に結び付ける動きを読み解く視点の一つです。
以下では、戦略の変化が事業配置と実行体制にどう表れるかを、大林組と清水建設の例から確認します。公表された方向と実行済みの施策を分け、それぞれの重点を見ていきます。
関連記事:建設業のバリューチェーンはどう変わる?価値を生む役割の変化

ここでは、大林組と清水建設を具体例に、事業の方向付けと、それを支える方針・施策を見ていきます。
大林組は、中期経営計画2022の2024年5月追補で、当初想定との環境の違いを踏まえ、建設事業の基盤強化を継続・徹底する方針を示しました。コーポレートレポート2026の紹介ページでも、国内建設を中核としながら、それ以外の事業が同等以上の業績を生む事業ポートフォリオを目指す方向を掲げています。
基盤強化を継続しながら将来の事業配置も描く方針は、既存事業を支える資源と成長投資の両立を課題にしていると読めます。ただし、掲げられた将来像だけで、事業構成の転換や個別投資の成功が確認できたとは扱えません。
清水建設の公式経営方針には、2025年度の振り返りとして、採算重視の受注判断、消化能力に応じた事業量の管理、人財・組織の連携が記載されています。役割と職責を重視した人事制度は2026年4月導入とされ、人財管理や配置調整のシステム構築も取り組みとして示されています。
これらは、受注判断と組織の実行能力を結び付ける取り組みとして捉えられます。人財の配置見通しは、受ける仕事の条件を検討する判断材料になり得ます。ただし、人事制度の導入やシステム構築の取り組みは、配置の改善や生産性向上の実績とは分けて扱います。
| 比較項目 | 大林組 | 清水建設 |
|---|---|---|
| 目標とする事業の姿 | 国内建設を中核に据えながら、それ以外の事業が同等以上の業績を生む事業ポートフォリオを目指す | 採算を重視し、消化能力に見合った事業量を管理する |
| 資源配分上の重点 | 現在の建設事業を支える基盤強化と、将来の事業配置に向けた投資の両立 | 受ける仕事量と、人財配置・組織の実行能力との整合 |
| 方針を実行に移す施策 | 中期経営計画の追補に基づき、建設事業の基盤強化を継続・徹底 | 採算重視の受注判断、人財・組織の連携、2026年4月の人事制度導入、配置調整システム構築への取り組み |
参照資料の範囲では、大林組は事業構成を見据えた配分、清水建設は受注を実行するための配分という違いが見えます。資料の記述量や種類の違いだけで実行の進度を比べたり、一方にない施策だと判断したりはできません。
前節の事業ポートフォリオの例からは、現在の建設事業を支える基盤と、将来の成長に向けた事業配置を併せて考える視点が得られます。自社で新しい領域を検討する際も、その市場の魅力に加え、既存事業からどの人財や資金を振り向けることになるかが論点になります。
受注方針と人財配置を結び付ける取り組みは、成長の方向を組織の実行能力と合わせて考える重要性を示唆しています。事業を広げる判断には、必要な技能や施工体制を確保できるかという検討が伴います。さらに、工事の完了後も資金が拘束されたり、運営や顧客対応が続いたりする領域では、引き受ける責任の範囲も変わります。
両社の方針を自社に照らすときは、こうした資源・能力・責任の違いを、具体的な選択肢ごとに確かめることが役立ちます。検討中の案件や事業を一つ取り上げ、次の3点を確認してみてください。
判断に必要な情報が部門やシステムに分かれている場合は、この3点を確かめるうえで何が不足しているかを整理できます。
関連記事:建設DXで収益モデルはどう変わる?工事の粗利改善と継続収益の条件
大林組と清水建設の例からは、成長分野の選択に加え、事業構成や実行体制の見直しにも戦略の変化が表れることが読み取れます。検討中の方針を具体的な業務やシステムに落とし込む段階では、課題の整理から導入・運用までを支援するYopazのITコンサルティングも相談の選択肢です。検討している取り組みと、具体化に向けて迷っている点を添えて、お問い合わせください。
A.必要な工種、施工時期、対応範囲など、取引先が求める条件を見直すきっかけにはなり得ます。ただし、経営方針の公表だけで選定基準や発注量が変わったとはいえません。実際の引き合いや取引先の説明に、どのような変更があるかを確認します。
A.大手の方針だけでは判断できません。自社の営業地域で実際に発注が見込まれるか、既存顧客が何を求めているかを確かめる必要があります。大手の事業方針と、自社が受注できる地域・工種の需要は分けて捉えます。
A.依頼だけで新しいシステムへの投資が必要とは限りません。必要な情報と利用目的を確認し、既存の記録や仕組みで対応できる範囲を見ます。新たな情報整備や継続更新が必要なら、その負担と責任を取引条件と併せて検討します。