生成AIの情報漏れは、誰でも起こり得ます。
2025年11月には、OpenAIでも外部ツールの侵害に関連して、
一部APIユーザー情報の流出の可能性が示されました。
生成AIが普及するほど、AIに持ち込まれるテキスト・画像・ファイルは増えていきます。
一方で、ルールがないまま使い始めると、
どこで漏れるのかが見えない状態のまま運用が定着してしまいます。
本記事では、情報が漏れやすい6つの経路を整理し、
7つの対策をチェックリストとして提示します。
個人でも企業でも、これまで見落としていたポイントに、短時間で気づけるはずです。
生成AIの情報漏えいは6つの経路に分かれます。
ただ、最初は次の3つに分けて見ておくと、全体像がつかみやすくなります。
人が持ち込む経路:プロンプトやファイル入力、個人アカウントの“シャドーAI”利用
AI側で起きる経路:処理・学習、保存・表示、ツール連携(拡張)による漏えい
外から崩される経路:個人クラウドなど外部アプリへの流出、アカウント乗っ取り(認証の侵害)
このあと、6つの経路を順に見ていきます。
生成AIは既存の知識に加えて、私たちが入れた指示や資料を材料に答えを作ります。
便利さの裏側で、入力がそのまま情報持ち出しになりやすい。たとえば:
コードを貼って「ここ直して」と頼む。
契約書を入れて「不利な条項がないか見て」と読む。
顧客メールをそのまま入れて翻訳し、返信文まで整える。
最初は「これくらいなら大丈夫」と見過ごしてしまいます。
ところが、事故や共有ミスが起きた瞬間、被害は大きくなります。
しかも生成AIは、材料が具体的なほど答えが鋭くなります。
だから入力をぼかすほど、実務では使いにくくなるという矛盾が残ります。
実際、Netskopeのレポートでは、
生成AI利用におけるデータポリシー違反で多いデータ種別として、
ソースコード(42%)、規制対象データ(32%)、知的財産(16%)が挙げられています。
「関連記事」:Cloud and Threat Report: 2026 - Netskope
もう一つ厄介なのがプロンプトインジェクションです。
外部の文章やサイトに紛れた指示にAIが影響され、
意図しない動きや情報漏えいにつながることがあります。
「関連記事」:【2026年最新】AI悪用の手口9選:生成AI時代に企業が今やるべき備え
入力したデータは、使い方によっては、
そのAIサービスの改善や学習に回る可能性があります。
ただし、これは「生成AIなら全部同じ」ではなく、
提供企業のポリシーや、同じ企業でもプランや設定によって扱いが変わります。
たとえば、OpenAIの個人向けChatGPTでは、
会話内容がモデル改善に回る設定になっています。
止めたい場合は設定でオプトアウトできます。
一方、APIやChatGPT Team/Enterpriseなど法人向けは、
入力・出力を学習に使わない方針を明記しています。
「関連記事」:How your data is used to improve model performance | OpenAI
Googleも同様で、Geminiは提供形態で扱いが分かれます。
Cloud・Workspace向けは学習に使わない一方、個人向けは設定で変わります。
最初にアクティビティ保存を確認しておくと安心です。
「関連記事」:How Gemini for Google Cloud uses your data | Google Cloud Documentation
「関連記事」:AI選び間違ってない?実践から学ぶChatGPTとGeminiの本当の使いどころ
入力を学習に使わせないオプトアウトを用意している生成AIもあります。
それでも設定を見落とせば、入力はモデル改善に回り得る。
機密を入れるほど、後から影響が残ります。
この段落では、主なリスクを3つに絞って整理します。
会話履歴の表示不具合:2023年3月、OpenAIは不具合により、一部のユーザーが他人のチャット履歴のタイトルを見られる可能性があったと説明しました。
秘匿情報の表示不具合:同じ事象で、ChatGPT Plusの一部ユーザーの氏名・メール・請求先住所・カード下4桁などが他ユーザーに表示され得たことも公表されています。
データベースの公開設定ミス:GenNomisでは、認証のない状態でデータベースにアクセスでき、プロンプトのログや生成画像へのリンクが閲覧可能だったと報告されました。
不具合でなくても、履歴の残存・共有リンクの作成・出力の転載が重なると、
閲覧範囲が意図せず広がります。
生成AIの情報漏えいは、入力ミスではなく「アカウントを取られるところ」から起きます。
フィッシングでログイン情報を抜かれると、会話履歴はもちろん、
連携サービスも権限次第で見られてしまいます。
入力に気をつけていても、ログインが破られたら防ぎきれません。
「関連記事」:【2026年予測】サイバー攻撃トレンド4選:2025年の振り返りから企業の対策まで
拡張機能やAIエージェントは、生成AIを外部ツールと連携させて動かすための機能です。
クラウドストレージやメール、チャット、社内ツールとつなげるほど便利になりますが、
その分、情報を抜かれる入口も増えます。
連携先のアカウントや権限を押さえられると、
権限次第で広い範囲のデータまで見られてしまいます。
「関連記事」:AIエージェントとは?ビジネス活用の基礎と最新動向
企業側が慎重に生成AIを使っていても、外部アプリ起点の抜け道は残ります。
特に、次の2つは「悪意よりも、便利さ」で起きやすいので先に押さえておきたいところです。
シャドーAI:Netskopeの調査では、生成AI利用者の47%が個人アカウントで利用しています。結果として、入力や共有の状況を後から追えなくなります。
個人クラウド: 個人ストレージに置いた資料をAIに渡すと、共有の範囲が一気に広がり、誰がアクセスできるのか追いづらくなります。個人クラウドはインサイダー起点の事故の60%に関与するとされ、リスクが跳ね上がりやすい領域です。
社員が勝手に使い始めるだけで、企業の情報漏えいリスクは一気に高まります。
生成AIの情報漏えいは、入力、保存・共有、認証、連携、外部アプリと、
入口が一つではありません。
次章では、企業として先に決めることと、
現場で効く対策をチェックリストに落とし込みます。
「生成AIの情報漏えいを防ぐには、何から手を付ければいいのか?」
答えは、利用プロセスの抜け穴を上流から順に埋めることです。
ルール、入力、環境、権限、アカウント、教育、監視の7つに集約できます。
企業は、次の内容を含む利用ルールを定めます。
利用・インストールしてよい生成AI・関連ソフトの範囲
企業アカウント必須となる場面(ログイン、履歴・ファイルの保存、共有)
企業アカウントの私的利用は禁止(個人用途は個人アカウントで分離)
AIに入力してよいデータの範囲(公開・社内・機密などの区分)
こうした線引きを先に作れば、社外ツールや私物環境への持ち出しを抑えられます。
情報の流れも見える化でき、管理・監査が回しやすくなります。
生成AIにプロンプトや資料を入れるとき、
機密や個人情報を含む可能性があるなら、入力前に一手間かけます。
固有名詞(社名・顧客名・IDなど)を伏せる
固有名詞は仮名に置き換える(A社、顧客Xなど)
必要な情報だけに絞って入れる
あわせて、よく使う場面ごとに手順とテンプレを用意しておくと、
入力の迷いと作業時間を減らせます。
「関連記事」:生成AIプロンプトのコツ7つ|業務効率を最大化する実践ガイド
AIに入力したデータが学習に使われる可能性を下げるには、次の3点を押さえます。
各ツール・各プランごとのデータポリシーを確認する
データを学習に使わない方針を明示し、プライバシーポリシーが透明で、ISO/IEC 27001などの認証を持つ事業者・プランを選ぶ
オプトアウト機能がある場合は有効化し、設定が維持されているか定期的に見直す
生成AIを外部アプリと連携して使うなら、次の4点をセットで徹底します。
API連携とプラグインの権限を管理する
不要なアプリやリスクの高いアプリは許可しない
AIエージェントは最小権限で運用する
外部連携の動きを監視できる状態にしておく
生成AIでの情報漏えいを防ぐうえで、ログイン情報の保護は基本です。
それでも現場では油断が起きやすいので、次を徹底します。
多要素認証を有効にし、パスワードが漏れても突破されにくくする
マルウェアやウイルス対策を整え、端末側での窃取を防ぐ
IDやパスワードを安易に保存・放置しない
ログイン情報を他人に共有しない
フィッシングを疑う習慣を持ち、偽のログイン画面に入力しない
不審なログイン履歴やセッションを検知できるよう監視する
対策や保護システムを整えても、現場が守らなければ効果は出ません。
だからこそ、情報セキュリティは最後に「人」に落とし込むことが必要です。
主な取り組みは次の通りです。
定期的な研修を実施する
新しい手口や現場の事例を共有し、危ないポイントを更新し続ける
定期的に理解度や運用状況を評価する
抜き打ちの確認で、ルールが形骸化していないかを見る
Yopazでも、ISO/IEC 27001の運用を維持するため、
社内向けのセキュリティ研修を継続しています。
「関連記事」:ISO/IEC 27001 認証授与式:Yopazの情報セキュリティ遵守へのコミット
データを安全に扱うには、対策を入れるだけでなく、
運用の中で異常に早く気づける状態が欠かせません。
例えば、次の項目を軸に監視とアラートを整えます。
操作ログ・アクセスログを記録し、一定期間保管する
機密情報のアップロードを検知し、アラートを出す
不審な通信や危険なサイトへのアクセスを検知する
シャドーAIの利用状況を把握する
API連携、拡張機能、AIエージェントの動きを監視する
これにより、リアルタイムに近い形で状況を把握でき、
情報セキュリティの運用を一段と強くできます。
この7つの対策で、
生成AI利用で起きやすい情報漏えいリスクはひと通り押さえられます。
見ておきたいのは「人」「システム」「運用プロセス」「外部要因」の4つです。
どれかが抜けると、その部分が弱点になります。
だからこそ、まとめて運用することが大切です。
生成AIの情報漏えい対策は、自社の機密を守るだけでなく、
顧客や取引先の情報を守り、信頼を落とさないためにも欠かせません。
「セキュリティは土台、成長はその先」。
YopazはISO/IEC 27001に沿った運用を継続し、
AI活用でもデータの扱いとアクセス管理を前提に、効果と安全性の両立を重視しています。
AI活用のアイデアがあれば、まだ整理できていなくても構いません。
雑談ベースでも構いませんので、気軽に声をかけてください。
シャドーAIとは、会社の統制が及ばない形で生成AIを業務に使うことです。未承認の生成AIやプラグインを使う場合だけでなく、承認済みのツールでも個人アカウントで業務データを扱えば、シャドー利用に当たります。
自分の入力データを「学習や改善に使わないでほしい」と設定で拒否することです。生成AIのサービスによっては、チャット内容や入力データがモデル改善に使われる可能性があるため、オプトアウトを有効にすると、その利用を止める方向に設定できます。