2025/03/21
704
物流DX:定義、メリット、必要性、導入流れ、注意点を徹底解説

急速に変化し、競争が激化する物流業界において、企業が競争力を維持し、物流プロセス全体の効率を向上させるためにはDX導入が不可欠です。本記事では、物流DXのメリットや重要性、成功事例、導入プロセス、さらには注意すべきポイントについて詳しく解説します。物流DXを検討中の企業様、ぜひご注目ください!

目次

1. 物流DXとは

2. 物流プロセスにおけるDX物流の応用とメリット

3. 物流業界の背景とDX化の必要性

4. 物流DXの成功事例:先進企業の取り組みと成果

5. 物流DXの流れ

6. 物流DXの課題・解決策・注意点

7. 終わり

はじめに

近年、物流業界では人手不足、コストの上昇、配送の遅延が深刻化しており、特に2024年問題や世界情勢の変化が大きな影響を及ぼすと懸念されています。そのため、企業は業務の効率化と持続可能な物流体制の構築が急務となっています。

本記事では、物流DXの概念やメリットを解説するとともに、業界の現状、成功事例、導入プロセス、そして注意すべきポイントについて詳しくご紹介します。物流DXに関心のある企業様は、ぜひ最後までお読みください!

重要なポイント:物流DXで見逃せない5つの戦略的視点

  • AIを活用した物流DXの導入により、企業は物流コストを15%削減し、在庫レベルを35%改善、さらにサービスレベルを65%向上させることが可能になっています。
  • ある企業では、無人搬送車とロボットによる自動仕分けシステムを導入したことで、倉庫管理にかかる人件費を27%削減することに成功しました。
  • DXの効果を最大化するためには、特定の業務プロセスだけでなく、物流全体に統合的にDXを導入することが不可欠です。
  • 物流業界におけるDXの導入は、2024年の課題、人手不足、EC市場の急成長、そしてグローバルな変動といった現在の業界環境に柔軟に適応し、競争力を維持・強化するための重要な戦略となります。
  • 物流DXを成功させるためには、PDCA(計画・実行・評価・改善)の継続的なプロセスが不可欠です。

DXを戦略的に活用し、次世代の物流をリードする企業へ。今こそ、DX推進を加速させましょう!

1. 物流DXとは 

物流DXとは、デジタル技術を活用し、従来の物流プロセスを抜本的に変革する取り組みです。これまでのアナログな物流管理では、データの活用が不十分であり、在庫管理や配送計画が手作業で行われるなど、非効率な業務が課題となっていました。しかし、DXを導入することで、物流業務の効率化、コスト削減、そしてサービス品質の向上が可能になります。

物流DXの目的は、単なる業務効率化にとどまらず、企業の競争力を強化し、日本国内のみならずグローバル市場でも優位性を確立することにあります。物流の最適化は、日本におけるサプライチェーン全体の強化にもつながり、企業の成長を加速させる重要な要素です。そのため、物流DXの導入は、企業が持続的な成長を実現するために欠かせない戦略となっています。

関連記事:DXとは何か?日本におけるAIの活用状況と課題を徹底解説!

2. 物流プロセスにおけるDX物流の応用とメリット

 2.1. DX物流の主なメリット

物流DXの導入は、企業のROI向上、コスト削減、サプライチェーンの最適化を実現し、さらに脱炭素化や労働力不足の解消、カスタマーエクスペリエンスの向上、災害リスク管理の強化など、幅広いメリットをもたらします。

具体的には、McKinseyの調査によると、AIを導入した企業は物流コストを15%削減し、在庫レベルを35%改善、さらにサービスレベルを65%向上させることに成功しています。加えて、注文後1日以内の出荷率が向上し、配送スピードが40%改善されるなど、AIと自動化技術の活用が物流業界の生産性向上に大きく貢献していることがわかります。

これらのデジタル技術を戦略的に活用することで、企業は競争力を高め、持続可能な物流ネットワークを構築できます。

 2.2. 物流プロセスにおけるDX物流の応用

物流DXは、特定の業務にとどまらず、サプライチェーン全体の効率化を実現する革新的な取り組みです。物流の各プロセスでDXを活用することで、それぞれの業務を飛躍的に向上させることが可能になります。

まず、物流業界におけるDX技術ソリューションの特徴や特性を包括的に把握するために、以下の表をご覧ください。

物流業務におけるDX導入状況を示したグラフ。自動化・機械化とデジタル化の軸で、倉庫・配送に関する各種技術の導入状況を分類し、DXの進展度を視覚的に表現している。

物流業界におけるDX技術ソリューションの特徴や特性

以下では、DXの各段階における具体的な導入事例をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください!

  2.2.1. 調達DX:コスト削減と安定供給の実現

BigDataによる需要予測:過去の購買データや市場動向を分析し、最適なタイミングと適切な数量での発注を支援します。

クラウド型SCM(サプライチェーン管理):サプライヤーの状況をリアルタイムで把握することで、意思決定の精度が向上します。さらに、発注や支払い業務のデジタル化により、業務の効率化とミスの削減が可能になります。

ブロックチェーン技術: ブロックチェーンによる顧客情報や商品の出所を透明化することで、発注時の詐欺リスクを低減し、取引の信頼性を向上させます。

  2.2.2. 倉庫・在庫管理DX:業務の効率化と人手負担の軽減

WMS(倉庫管理システム)、IoT & RFID:自動化による最適な倉庫内で管理・配置を実現し、ヒューマンエラーを削減することができます。さらに、倉庫の在庫状況をリアルタイムで可視化することで、管理の精度と効率を向上させます。

AGV(無人搬送車)・ロボット:人手の負担を軽減し、作業時間を短縮することで、倉庫内業務の生産性を向上させます。

  2.2.3. 受発注DX:業務の迅速化と正確性の向上

OMS(注文管理システム):複数の販売チャネルとの連携により、受注管理が簡単になり、運営の有効性が向上します。リアルタイムの在庫管理により、欠品リスクを低減し、安定した供給を実現します。

AIチャットボット:顧客の注文情報や配送状況の問い合わせに即座に対応し、カスタマーエクスペリエンスを向上させます。

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション):受発注業務を自動化することで、企業の負担を軽減し、人的ミスを最小限に抑えます。

  2.2.4. 輸送・配送DX:配送の迅速化とコスト削減

TMS(輸送管理システム):AIを活用した最適な配送ルートの選定により、渋滞を回避し、燃料費や輸送コストの削減を実現できます。これにより、ラストワンマイル配送のスピードが向上します。

GPS & IoT:配送状況をリアルタイムで可視化し、正確な配達時間を予測することができます。

  2.2.5. アフターサービスDX:顧客対応の最適化

返品管理システム(RMS):オンラインでの返品・交換手続きと進捗状況をリアルタイムで確認できるため、顧客の利便性が向上します。

AIによる品質管理:商品の品質をAIが評価し、不良品の発生原因を特定することで、品質向上につなげます。

データ分析とAIチャットボットによる顧客対応の最適化:クレームや返品理由のデータを分析し、顧客インサイトを把握することで、より迅速かつ的確な対応が可能になります。

  2.2.6. まとめ

つまり、物流業務の最適化を実現するためには、DXを特定のプロセスに限定せず、サプライチェーン全体にわたって包括的に導入することが重要です。これにより、物流における管理や運用が統合的に最適化され、DXのもたらすメリットを最大限に引き出すことができます。今こそ、物流業務全体にDXを適用し、持続可能な成長を目指すべき時です。

3. 物流業界の背景とDX化の必要性

近年、技術の進化とともに、物流業界も急速な環境変化に直面しており、さまざまな課題が浮き彫りになっています。この中で、物流DXの重要性が全業界で注目されています。

 3.1. 物流の2024年問題

物流業界では、厚生労働省が発行した規制により、2024年4月1日からトラックドライバーの時間外労働が年間960時間に制限されることが大きな懸念となっています。これにより、配送能力の低下、ドライバー不足の深刻化、物流コストの増加など、業界全体に大きな影響を与えています。物流の2024年問題がもたらす影響については、以下の表をご覧ください。

2024年問題が物流業界にもたらす悪影響を示した図。ドライバーの労働時間短縮やトラック輸送リソースの減少が、運送会社や荷主に与える影響を整理し、最終的に物流コストの上昇につながることを説明している。出典:ビジネス+IT。

2024年問題がもたらす物流業界への悪影響。出典:ビジネス+IT

そのため、配送ルートの最適化、配送効率の向上、トラックドライバーの負担軽減が喫緊の課題となっています。物流業界では、AIやIoTを活用した最適な輸送ルートの自動計算や、輸送管理システム(TMS)を活用した業務効率化が、DXによる有効な解決策として注目されています。

 3.2. 長期化する人手不足

物流業界では、長年にわたる深刻な人手不足が問題となっています。特に、少子高齢化の進行に加え、2024年問題の影響によりドライバーの業界離れが加速しており、人材確保がより困難になっています。

そのため、多くの企業が省力化と業務効率向上を両立できる技術的なソリューションに関心を寄せています。具体的には、WMS(倉庫管理システム)、AGV(無人搬送車)、ロボット技術の活用が挙げられ、これらの導入が業務の自動化と労働負担の軽減に大きく貢献すると期待されています。

 3.3. 電子商取引(EC)市場の急成長

日本のEC市場は、パンデミックによる一時的な停滞を経て、急速な成長フェーズに突入しています。

具体的には、BtoB-EC市場の規模が2023年度には前年より10.7%増加し、465兆円に達しました。また、企業間取引におけるEC化率は40.0%を突破し、デジタルシフトが加速しています。

日本のBtoB-EC市場の成長推移を示したグラフ。市場規模の推移(億円単位)とEC化率(%)を視覚的に表し、2023年に向けて着実に成長していることが分かる。出典:経済産業省

日本のBtoB-EC市場の状況。出典:経済産業省

BtoC-EC業界においても、市場規模の拡大が続くだけでなく、サービス分野の市場規模もパンデミック前の水準まで回復し、ECビジネス全体が活性化しています。

日本のBtoC-EC市場の成長推移を示したグラフ。物販、サービス、デジタル分野の市場規模の変化を可視化し、年々拡大している傾向が分かる。出典:経済産業省

日本のBtoC-EC市場の状況。出典:経済産業省

日本のEC市場の現状を詳しく知るために、経済産業省の市場調査をご参照ください!

このEC市場の急成長に伴い、物流業界も新たな課題に直面しています。注文数の急増により、迅速な配送と倉庫管理の効率化が求められるようになり、従来の物流システムでは対応が難しくなっています。さらに、返品対応やクレーム処理の複雑化により、業務負担が大幅に増加します。

現在の物流業界は、生き残りと成長をかけた熾烈な競争の中で、いかに効率的な物流システムを構築できるかが鍵となっています。

 3.4. 国際情勢と経済動向による燃料価格の変動

物流業界は、原油価格の変動や世界的な経済状況の影響を受けやすい業界の一つです。近年、国際的な紛争やサプライチェーンの混乱によって燃料価格の変動が激しくなっており、物流コストの増大が企業の収益を圧迫するリスクが高まっています。

この影響を最小限に抑えるためには、物流プロセス全体の最適化、特に輸送段階における燃料使用の効率化が不可欠です。具体的には、輸送管理のDX化を進め、AIを活用した配送ルートの最適化や、エネルギー効率の高い輸送手段の導入が求められています。これにより、燃料コストの削減とサステナブルな物流体制の構築が可能になります。

 3.5. 物流DX:企業の生存を左右する要因

競争が激化する物流業界において、DXの導入は単なる業務改善にとどまらず、企業の競争力を飛躍的に向上させる鍵となります。物流業界で生き残るためには、いかに効果的にDXを活用し、変化する市場環境に適応できるかが重要です。今こそ、物流DXを積極的に推進し、持続可能な成長を目指すべき時です。

4. 物流DXの成功事例:先進企業の取り組みと成果

物流業界の一部の企業は、いち早くDXの重要性を認識し、自社の業務に積的に取り入れています。本記事では、その成功事例として、DXを活用し大きな成果を上げた3つの企業をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください!

 4.1. ロボットソーターによる人員負担の27%削減

AGVとロボットソーターを導入することで、物品の搬送と仕分け作業を自動化しました。その結果、ヒューマンエラーによる誤配送を防ぎ、作業に必要な人員を27%削減することに成功しました。

倉庫内で稼働するロボットソーターのイメージ画像。これにより、人手の負担が大幅に軽減され、作業効率が向上している。

 ロボットソーター

さらに、従来この作業に従事していたスタッフを負担の大きい業務へ配置転換することで、全体の作業時間が短縮され、物流センター全体の業務負担削減にも貢献しました。生産性向上と人材活用の最適化を同時に実現した好例と言えます。

 4.2. AIを活用した交通事故防止プラットフォーム

この企業が提供するSSCV(Smart & Safety Connected Vehicle)は、輸送事業に関わる情報をデジタル化し、一元的に管理・提供するシステムです。

Smart & Safety Connected Vehicleの運用を示したイメージ画像。AIがリアルタイムで交通状況を分析し、突発的な事象を検知することで、安全性と効率性を向上させる。

SSCV

例えば、ドライバーの生体データや車両の状態をセンサーで取得し、AIがリアルタイムで分析することで、異常を検知した際には、ドライバーや運行管理者へ即座に警告を発信し、事故の未然防止に貢献します。

さらに、車両管理や整備履歴のデジタル化により、車両の稼働率向上や管理負担の軽減を実現。これにより、業務の効率化と安全性の向上を同時に実現するDX事例となっています。

 4.3. 1日あたり18,000件の発送を可能にする自動倉庫

倉庫の収容能力不足や物流経験の不足という課題を解決するため、この会社は自動倉庫を導入しました。

自動倉庫システムのイメージ画像。このシステムが注目される理由は、ダンボールの封函から伝票の貼付まで、一連の入庫プロセスを自動化し、シンプルかつ効率的な運用を実現する点にある。

自動倉庫

このシステムが注目されたのは、ダンボールの封函から伝票の貼付まで、一連の入庫プロセスを自動化し、シンプルな運用を実現することです。

その結果、省人化率72%を達成し、1日あたり18,000件の出荷を実現しました。作業負担の軽減と圧倒的な処理能力を両立した事例として注目されています。

 4.4. まとめ

DXを成功裏に導入している企業の事例から、物流業界におけるデジタル変革は、もはや企業が取り組むべき必須の課題となっています。

5. 物流DX導入の流れと成功のポイント

物流DXの重要性を理解している企業は多いものの、その具体的な導入プロセスを把握できていないケースも少なくありません。本記事では、スムーズにDXを実現するための4つのステップを詳しく解説します。

 5.1. 課題の特定とDXの目標設定

まず、DX導入の第一歩として、自社の業務状況を分析し、物流業界の変動が経営に与える影響を評価することが重要です。これにより、直面している課題を明確化し、それに基づいた段階的なDX戦略と具体的な目標を設定することができます。  

 5.2. DXソリューションまたは専門パートナーの選定

次に、企業の要件に応じたITソリューションを選定します。また、社内のリソースだけでは対応が難しい場合は、物流DXに精通した外部パートナーを活用するのも有効な選択肢です。

市場には多くのDX企業やITソリューションが存在するため、自社の要件に最適なものを慎重に評価することが求められます。DXソリューションを選定する際は、ROI(投資対効果)、利用条件、自社システムとの適合性、そしてカスタマーサポートの充実度などの要素を十分に考慮することが重要です。

 5.3. 社内でのDX導入

DXの本格導入にあたっては、まず小規模な範囲で試験的に導入し、その効果を測定しながら調整を行うことが推奨されます。PoC(概念実証)を実施し、実際の業務に適用することで、問題点を特定し改善を進めることが可能になります。試験導入の結果をもとに最適化を行い、DXを全社規模へ展開する準備を整えます。

また、この段階では、DXに関するリサーチや社員への教育を徹底し、デジタル化への理解と適応を促進することが重要です。さらに、導入した技術ソリューションの最適化を継続的に行い、業務プロセスへの定着を図ることが求められます。

 5.4. DX導入後の評価と継続的な改善

DX導入後も継続的な改善が求められます。導入前後の業務効率をデータ分析し、どの程度の改善が図られたのかを評価することで、さらなる最適化が可能になります。最新の技術トレンドを把握し、市場の変化に応じてDX戦略を柔軟に調整することも、競争力を維持するためには欠かせません。その結果、DXの効果を最大化し、業務のさらなる効率化が期待できます。

 5.5. 物流DX成功の鍵

物流業界におけるDXの導入は、PDCAサイクルの概念と多くの共通点を持っていると言えます。これは継続的に実施されるプロセスであり、企業は過去の経験から学び、改善を積み重ねながらDXを進化させていくことが求められます。このように、常に最適化を図る姿勢こそが、DXを成功へと導く鍵となります。

PDCAサイクルの概要を示した図。計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)の4つのステップで構成され、継続的な業務改善に役立つフレームワークとして広く活用されている。

PDCAサイクルの概略

6. 物流DXの課題・解決策・注意点

物流DXを展開する際、物流業界の企業はさまざまな課題に直面することが避けられません。でも、ご安心ください!これから紹介する解決策が、そうした問題を克服するのに役立ちます。

6.1. 高額な初期投資とROIの不確実性

物流DXを推進するには、多くの技術的な投資が必要になります。そのため、DXの導入には高額なコストがかかるものの、その有効性が明確に示されていないケースも少なくありません。特に、中小企業にとっては、DX導入によるROIへの不安が大きく、導入をためらう要因の一つとなっています。

この課題に対応するためには、小規模な導入(PoC:概念実証)を実施し、DXの効果を確認することが不可欠です。加えて、サブスクリプション型のITソリューションを活用することで、企業の自主性が高まり、初期投資コストを抑えることができます。また、企業は国や地方自治体が提供するDX推進補助金や支援制度の活用も検討すべきです。

 6.2. 人的要因:DXへの抵抗感と高度人材の不足

多くの物流企業は、長年にわたりアナログな業務プロセスに慣れ親しんでおり、「現状のままで問題ない」と考えがちです。その結果、DXの導入に対する抵抗感が生まれ、大きな課題となっています。また、前述の通り、物流業界における高度人材の不足はますます深刻化しています。

この問題を解決するためには、まず現場の従業員への教育と意識改革を徹底することが重要です。具体的には、従来の業務プロセスの非効率性を明確に示し、DXがどのように業務効率を向上させるのかを説明することで、説得力が高まります。また、DXの専門知識を持つ外部パートナーと連携し、導入時のサポートやトレーニングを提供することで、IT人材不足の問題を補うことができます。

 6.3. システムの互換性とデータ連携の難しさ

物流プロセスの各工程は、複数の異なるシステムによって運用されています。そのため、新しいDXシステムを導入する際、既存のシステムとの統合が難しく、データの連携がスムーズに行えないことが大きな課題となります。システム間のデータフォーマットの違いにより、手作業でのデータ入力が必要となり、DXの効率性が低下してしまいます。

この課題を克服するためには、API連携が可能なDXソリューションを選定することがポイントになります。クラウドベースの物流プラットフォームを活用すれば、異なるシステム間のデータ統合が容易になり、リアルタイムでの情報共有が可能になります。また、EDI(電子データ交換)を標準化することで、外部パートナーとのデータ連携もスムーズに進めることができます。

 6.4. DXの運用定着と継続的な改善の必要性

DXは継続的な改善が求められるプロセスですが、実際には新システムを導入したものの、十分に活用されず放置されてしまうケースも少なくありません。特に、業務が多忙な物流現場では、新たなシステムの習熟に時間をかける余裕がないため、DXの定着が進まないことが課題となります。

これを防ぐためには、PDCAサイクルを徹底し、定期的な評価と改善を行う体制を整えることが重要です。また、現場からのフィードバックを定期的に収集し、運用方法を柔軟に調整することで、DXの定着を促進できます。

 6.5. セキュリティリスクとデータ管理の重要性

物流DXの進展に伴い、クラウドやIoTを活用したデータ管理が一般化する一方で、サイバー攻撃のリスクが高まり、データ漏洩や不正アクセスの可能性が指摘されています。特に、サプライチェーン全体でのデータ共有が不可欠な物流業界では、システム全体にわたる情報漏洩のリスクが大きな課題となっています。

このリスクに対応するためには、データの暗号化、多要素認証(MFA)の導入、アクセス権限の適切な管理を徹底することが必要です。また、クラウドセキュリティを強化し、定期的なセキュリティ監査を実施することで、システムの脆弱性を早期に特定し、対策を講じることができます。

 6.6. DX導入を成功させるための注意点

物流DXの導入における課題とその対策を踏まえ、企業が成功に向けて注視すべきポイントは以下の通りです。

  • ROIを考慮した段階的な導入: 小規模なPoC(概念実証)を実施し、効果を測定しながら本格導入を進める。
  • 現場の意識改革と人材育成: DXに対する抵抗感をなくし、従業員が新システムを活用できる環境を整える。
  • システム統合とデータ連携の最適化: 既存システムとの互換性を確保し、業務効率を最大化する。
  • PDCAサイクルによる継続的な改善: DX導入後も運用状況を分析し、適切な改善策を講じる。
  • セキュリティ対策の強化:クラウドやIoTの活用に伴うデータ漏洩リスクを最小限に抑える。

これらの要素に注意を払うことで、企業はDXの導入を成功へと導くことができると言えるでしょう。

7. 終わり

まとめると、物流DXは業界全体における抜本的な改革となります。サプライチェーン全体にわたってDXを導入することで、業務の効率化を飛躍的に向上させるだけでなく、顧客満足度を高めることができ、企業の持続的な成長にもつながります。

競争が激化する物流業界において、DX推進はもはや選択肢ではなく、企業が生き残り、発展していくための不可欠な戦略です。今後、多くの企業が積極的にDXを取り入れることで、物流業界のさらなる進化が期待されています。

では、DX導入に向けた最適なテクノロジーソリューションをお探しの企業様は、ぜひYOPAZにご相談ください!貴社に最適なITソリューションをご提案いたします。