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公開日: 2026/04/21 更新日: 2026/07/13

【2026年最新】宿泊業界の主要プレイヤーはどう戦略を変えているのか?

2026年、宿泊業界の地図が塗り替わりつつある。国内大手・外資系チェーン・OTAの主要プレイヤーたちは、客室の稼働や価格設定の次を、すでに動き出している。施設を運営している立場から見ると、この変化は「大手の話」では済まない。なぜ今、業界の構造が変わっているのか。そして、どこへ向かっているのか。

本記事では、各プレイヤーの戦略転換を横断的に整理する。個別の動きを点で追うのではなく、業界全体の変化として線でつなぐことで、今何が起きているのかの全体像が見えてくる。

この記事で分かること

  • 宿泊業の競争は、稼働率や価格だけでは測れなくなっている

  • 国内大手は、直販・高付加価値化・運営標準化・資産再編の方向で戦略を組み替えている

  • 外資系チェーンとOTAは、日本市場の「選ばれ方」そのものを変え始めている

  • 競争の中心は、客室販売から顧客関係・滞在価値・全体最適へ移っている

  • 参考にすべきは大手の施策ではなく、近い条件で勝ち筋をつくっているプレイヤーの戦い方だ

宿泊業界の主要プレイヤーは、なぜ今そろって戦略を変えているのか?

宿泊業界ではいま、市場が伸びていても、その恩恵が均等に届いていない。成長を取り込める事業者とそうでない事業者の差は、じわじわと広がっている。2025年は訪日客数と旅行消費額が過去最高を更新する一方、延べ宿泊者数全体は0.8%減となり、日本人は3.8%減、外国人は8.2%増と伸び方に差が出ている。

「参考資料」:訪日外客数(2025年12月推計値)

 違いを生んでいるのは需要の有無ではなく、取り込み方の設計だ。どの顧客を狙うか、どの販路で予約を獲得するか。その差が、そのまま業績の差になっている。競争の論点も変わってきた。

客室稼働率や価格設定を見るだけでは、もう実態は読めない。顧客接点をどう持つか、滞在価値をどう設計するか、収益をどう残すか。「客室を売る」競争から、「収益が残る構造をつくる」競争へ移っている。 

「関連記事」:【2026年最新】宿泊業のバリューチェーンはどう変わるのか ? 

その変化をいち早く映しているのが、主要プレイヤーの動きだ。彼らがどこに投資し、何を強化しているのかを追えば、業界の競争軸がどこへ向かっているかが見えてくる。実際に、星野リゾートは予約変更をオンラインで完結できるFleBOLを導入し、楽天トラベルもAIによる宿探し支援を始めている。顧客接点や予約体験そのものを、すでに組み替えている。 

国内大手ホテルチェーンは、何を強化しているのか?

国内大手に共通しているのは、客室を売る力ではなく、収益を残す構造をつくり直していることだ。変化は四つの方向に表れている。

  • 直販と会員基盤の強化

  • 高付加価値化の推進

  • 運営の標準化と省人化

  • 資産・ブランド構成の見直し

直販と会員基盤を強め、顧客との関係を自社で握ろうとしている

各社が動いているのは、販売チャネルの最適化ではない。顧客との接点そのものを自社で持つことで、価格以外の訴求や追加提案をしやすくし、需要の変化にも自社主導で対応できる状態をつくることだ。会員基盤も、CRMというより、顧客との継続的な関係を築くための資産として捉え直されている。

「関連記事」:【2026年最新】宿泊業では、デジタル化によって収益モデルはどう変わっているのか? 

星野リゾートの「FleBOL」はその象徴だ。2025年10月から一部施設で導入されたこの仕組みでは、公式サイト経由の予約について、チェックイン当日朝まで人数・部屋タイプ・プラン・日程の変更をオンラインで完結できる。予約後の利便性まで公式導線に組み込んでいる点が、OTA経由では代替しにくい価値になっている。

西武グループもSEIBU PRINCE CLUB会員基盤の拡大を進めており、ホテル事業を含むグループ全体で顧客との関係を強めようとしている。 

「泊まる理由」を部屋の外に広げ、高付加価値化を進めている

立地や価格で選ばれる競争は、どこかで頭打ちになる。各社が向かっているのは、宿泊そのものに「来る理由」をつくることだ。地域の文化や体験を組み込み、価格だけでは比較されない文脈をつくることで、単価を引き上げやすくする。

星野リゾートはその典型だ。歴史的建築を活用した「星のや奈良監獄」を2026年6月に開業予定とし、施設そのものを体験の核に据えている。福井県あわら市とは観光まちづくりの連携協定も結んでおり、施設の外側にある地域ごと価値に変えようとしている。

藤田観光も2025年12月期に、高付加価値商品の提供と海外セールス強化で、インバウンド宿泊者数と利用単価が上昇したと明示している。単価を上げるための手段として、高付加価値化はすでに機能し始めている。

省人化を前提に、運営を標準化し直している

変わっているのは、誰がどの業務を担うかという話だけではない。「人がいないと回らない」オペレーションから抜け出すこと自体が、戦略になっている。標準化された仕組みは、品質を人に依存させず、需要が増えても同じコスト構造で回しやすくする。

アパホテルの「当日オートチェックイン」はその一例だ。事前決済予約を対象に、到着日当日に自動でチェックイン手続きが完了し、ホテル到着後は「1秒チェックイン専用機」にQR会員証をかざすだけで入室できる。フロントに人を張り付けなくても、一定の品質で大量をさばける状態をつくっている。運営の標準化が進むほど、1施設あたりの固定費を抑えながら展開しやすくなる。

既存資産を見直し、利益の出る構成へ組み替えている

新規開業だけが変化ではない。既存の資産をどう使うか、どう組み合わせるかを見直すことで、利益の出る構造をつくり直している。

藤田観光は2025年12月期、客室改装による売り止めが発生しながらも利用単価を引き上げた。稼働日数より資産の質を優先した判断だ。アパグループも2025年6月にイシン・ホテルズ・グループを完全子会社化し、「the b」16ホテルをネットワークに加えている。

西武・プリンスホテルズワールドワイドも国内外250ホテル体制の構築を掲げる。各社の動きに共通しているのは、1施設の最適化より、どのブランド・資産群で利益をつくるかという視点へ軸足が移っていることだ。直販、滞在価値、運営、資産活用。手段はそれぞれ違う。だが各社が向かっているのは同じ方向で、「どこで主導権を持ち、どこで利益を残すか」を作り直すことだ。

次のセクションでは、外資系チェーンが同じ変化にどう向き合っているのかを見ていく。 

外資系ホテルとOTAは、日本の競争ルールをどう変えているのか?

国内大手の動きだけを見ていると、日本の宿泊市場を内側からしか読めない。競争ルールを押し広げているのは、外資系ホテルとOTAでもある。

  • 外資系チェーン:ブランド・会員基盤・開発力で日本市場の存在感を拡大

  • OTA:予約窓口から、需要 を見つける入り口へ

競争の基準は、施設単体からネットワーク・発見経路・顧客接点を含むものへ移りつつある。

「関連記事」: 【2026年最新】プラットフォーム化は宿泊業界に何をもたらしたのか?

外資系チェーンは日本市場を成長市場と見ている

外資系チェーンは、日本に拠点を置くだけではない。日本を成長市場と位置づけ、展開を戦略的に進めている。IHGは2025年2月時点で日本の開業ホテル数が50軒に達したと公表し、日本を重点市場と明言した。沖縄へのANAクラウンプラザ進出や札幌でのインターコンチネンタル初開業など、拡大は都市部にとどまらない。国内施設が比較される相手は、じわじわと変わっている。 

「参考資料」:IHG Hotels & Resorts hits 50 open hotels milestone in Japan - InterContinental Hotels Group PLC 

OTAは集客チャネルから、需要発見のエンジンへ変わりつつある

楽天トラベルは2025年9月、「楽天トラベルAIホテル探索」を開始した。口コミ、予約トレンド、宿泊プランなどのデータをもとに、自然言語で入力された曖昧な要望から候補を提案できる仕組みで、最大30件まで比較できる。OTAは、予約の受け皿にとどまらず、宿探しの初期段階にも影響力を広げ始めている。 

「参考資料」:Rakuten Travel Launches Rakuten Travel AI Hotel Search, an AI Agent Offering Users Tailored Hotel Recommendations | Rakuten Group, Inc. 

外資系チェーンの拡大とOTAの進化が重なることで、宿泊施設が比較される文脈は変わっている。近隣の類似施設との横並び比較だけでなく、どのブランドと同じ土俵に乗るか、どの導線で埋もれるかまでが、競争の中身になっている。競合リストを見直すより先に、「誰と比べられているか」の前提を疑うべき局面かもしれない。 

主要プレイヤーの動きから、宿泊業の競争はどこへ移るのか?  

ここまで見てきた主要プレイヤーの動きから、宿泊業の競争軸は以下の方向へ移っている。

  • 稼働率の競争から、利益率の競争へ

  • 集客の競争から、顧客関係の競争へ

  • 客室販売から、滞在価値の設計へ

  • 人手の運営から、標準化されたオペレーションへ

  • 単館最適から、ブランド・会員・データを含む全体最適へ

変わっているのは個別の施策ではなく、何をもって競争力とみなすかの基準そのものだ。

稼働率の競争から、利益率の競争へ

以前は、客室を埋められるかどうかが競争力の中心だった。しかし、稼働率が高くても、利益が残らない構造では意味がない。どの顧客を、どの価格で、どの販路で取るか。その設計の差が、そのまま収益の差になっている。 

集客の競争から、顧客関係の競争へ

予約を取ることと、顧客との関係を持つことは違う。問われているのは後者だ。直販や会員基盤の強化が各社で目立つのも、予約の入口を自社で握ることで、滞在前後も含めた接点を持てるようにするためである。その接点があるかどうかが、価格以外の価値を伝えられるかどうかの差になっている。 

客室販売の競争から、滞在価値の設計競争へ

立地や価格、客室スペックだけでは、もう差がつきにくい。主要プレイヤーが向かっているのは、「なぜそこに泊まるのか」という理由をつくることだ。地域の文化や体験を組み込み、その場所でしか得られない滞在をつくることで、価格比較の外に出ようとしている。 

人手の運営から、標準化されたオペレーションへ

人の経験や現場対応力に支えられた運営は、品質が属人的になりやすく、拠点が増えるほど管理が難しくなる。重視されているのは、誰が担っても同じ品質で回せる仕組みだ。省人化はその手段であり、目的は業務の標準化にある。

単館最適の競争から、ブランド・会員・データを含む全体最適の競争へ

競争の単位が変わってきた。1施設の出来不出来だけでなく、ブランド、会員基盤、データをどう組み合わせて利益をつくるかが問われている。この競争では、大手ほど有利になりやすい。複数ブランドを持ち、顧客基盤を蓄積し、施設間で価値をつなげられるからだ。中堅・地域施設にとっては、同じ土俵で正面から競うより、どの競争軸なら自社に分があるかを見極めることの方が、実質的な問いになっている。 

つまり、競争の前提が変わっている。稼働率や価格だけでは、もう実力は測れない。主要プレイヤーの動きが示しているのは、顧客との関係をどう握り、利益が残る構造をどうつくるかが、競争力の中身になってきたということだ。個別施策の数より、自社の勝ち筋をどう設計するかが問われている。 

では、自社はどのプレイヤーの戦い方を参考にすべきか?

主要プレイヤーの動きは参考になる。ただ、表面的に施策をなぞるだけではうまくいかない。規模、立地、顧客層が違えば、同じ打ち手でも意味は変わるからだ。ここでは、自社の戦い方を選ぶうえで押さえたい3つの視点を整理する。  

自社は、誰と同じ土俵で戦っているのか

まず必要なのは、自社がいまどのセグメントにいるのかを把握し、近い条件で戦っているプレイヤーを見つけることだ。その相手がどこを勝ち筋にしているかを読むほうが、業界トップの動きを追うより実用的な問いになる。 

そのプレイヤーは、何を勝ち筋にしているのか 

見るべきなのは施策の数ではなく、その企業が何を競争の軸に選んでいるかだ。直販を強めているとして、それは利便性向上のためなのか、顧客関係を自社で握るためなのか。同じ動きでも、目的が違えば意味は変わる。表面の施策より、どこで主導権を持とうとしているのかを読む方が、参考になる。  

自社は、最初にどの競争軸を動かすべきか

戦い方を選ぶ判断軸は複数ある。自社にとって最も切迫した課題はどこか。業界全体の動きと照らして、外してはいけない方向はどこか。そして、他社がまだ十分に押さえていない要素はどこにあるのか。

すべてを一度に動かす必要はない。自社にとって最も切迫した課題から始め、一手ずつ競争軸を変えていくことが現実的だ。

「関連記事」: 【2026年最新】宿泊業界の技術トレンドと今後5年の戦略|優先順位で考えるDXの進め方

Yopazは、AI・DX・ITを軸に宿泊業の支援を行っている。自社に合った進め方を整理したい場合は、一度相談してほしい。

おわりに

主要プレイヤーの動きを追う意味は、市場の方向をつかむことにある。ただ、その戦い方をそのまま持ち込んでも、自社の条件が違えば成果にはつながらない。規模、立地、収益構造が異なるなかで、どの競争軸を最初に動かすべきかの判断は、簡単ではない。

Yopazは、宿泊業のDX戦略を専門領域の一つとして、検討から実行まで支援している。市場の動きを踏まえながら、自社にとって現実的な打ち手を整理したい場合は、一度相談してほしい。

よくあるご質問

Q

Q.国内大手ホテルチェーンと外資系チェーンでは、戦略にどのような違いがありますか?

A

A.国内大手は直販強化・地域体験・運営標準化・既存資産の見直しを通じて、利益が残る構造への転換を進める傾向があります。外資系はブランド力・会員プログラム・開発力を軸に、日本市場での展開拡大を加速させています。

Q

Q.OTAの影響力が強まる中で、宿泊施設は何を自社で持つべきですか?

A

A.OTAを使わないことではなく、依存しすぎない状態を作ることが重要です。公式サイトの予約導線・会員基盤・顧客データ・滞在前後の接点を自社で持つことが、その土台になります。

Q

Q.中堅・地域宿泊施設でも、主要プレイヤーの戦略から学べることはあるのか?

A

A.あります。学ぶべきは投資規模や機能そのものではなく、どこを勝ち筋にしているかという考え方です。価格ではなく滞在価値で選ばれる、顧客接点を持つ、運営を標準化するといった発想は、規模を問わず応用できます。

Q

Q.自社が今、どの競争軸で戦っているかはどう見極めればいいのか?

A

A.利益率・OTA依存度・リピーター比率・属人的な運営の限界、どこが最も切迫しているかを整理することが先決です。課題を一つに絞ると、優先して動かすべき軸が見えてきます。

Q

Q.主要プレイヤーの戦略を、そのまま真似してはいけないのはなぜか?

A

A.規模・立地・顧客層・投資余力が違えば、同じ施策でも効果は変わります。参考にすべきは施策そのものではなく、その企業がどこで主導権を握ろうとしているかという考え方です。

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