2026年9月、ニューヨークのカンファレンス「LDX3 New York」の基調講演で、Gergely Orosz氏が直近12か月の開発現場を総括しました。OpenAI・Anthropic・Cursor・Rampなどへの取材から見えたのは、手でコードを書かない開発の定着と、その裏で壊れ始めた仕組み。変化・ひずみ・変わらない価値・これからの4点を整理します。
多くのスタートアップで、AI生成コードの割合は100%に近づいています。エンジニアの役割はプロンプトで指示を出し、成果を見届ける側へ移りました。さらに、ボイスチャットでAIにコーディングを行わせることも、もはや珍しくありません。
LinearやCockroach Labsのエンジニアは、5〜10本のエージェントを同時に走らせています。一人で複数のタスクを並行処理する働き方が、腕利きの間で定着しつつあります。
Cursorは4月にエージェント中心のインターフェースへ転換し、JetBrainsもAirへ舵を切りました。Cursorのチームは、自社のIDEを「レガシー製品」と表現したそうです。企業側では、Ramp・Stripe・Uber・Shopify・Google・Metaなどが独自のAIコーディングハーネスを構築。社内データソースをつなぎ込めることが理由です。
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Orosz氏が訪ねた企業では、開発の依頼がSlackから始まる光景が目立ちました。OpenAIの社内ではCodexにタグ付けして実装を頼み、AnthropicもClaudeで同じ仕組みを製品として公開。Linearをはじめとするスタートアップでも、独自のSlackエージェントやボット連携を作る動きが広がっています。
OpenAIの「Perf Factory」では、エージェントが本番環境を監視し、改善のプルリクエストを自動で起こします。人間のレビューが入るのは、影響範囲の大きいPRが中心。Linearでは、エージェントが作成したチケット数が人間の作成数を初めて上回りました。GitHubでも、エージェントだけが作るPRが1月から8月にかけて約10倍に増えています。
ChatGPTのエンジニアリング責任者によれば、昨年はiOS・Android専任を募集していたものの、今年は募集をやめました。Codexがあれば、誰でも一定水準で対応できるためです。
Anthropicでは、一つのプロジェクトに入れるのは1〜2人。エージェント同士が干渉するからです。ジュニア採用も、緩やかに減速しています。
変化の速さに、現場の仕組みが追いついていません。Orosz氏が挙げたひずみは5つです。
ひずみが広がる中でも、揺らがなかった軸があります。
設計の古典も復活しています。Matt Pocock氏によると、トレーサーブレットやディープモジュールといった用語を指示に使うだけで、AIが返すコードの質が上がるそうです。
Orosz氏は、エージェントの実行環境がローカルからクラウドへ移ると見ています。Rampはすでに先行する一社で、Linearのエンジニアも考えを改めたそうです。コードを読まずに出荷する運用についても、懐疑派のCharity Majors氏が「起こるかどうかではなく、いつ起こるか」と語っています。いずれもOrosz氏の予測で、広く定着したとは言えません。
『Googleのソフトウェアエンジニアリング』の著者Titus Winters氏は、成功に必要な力を3つに分けます。
AIで知性が安価になるほど、知恵と説得力の価値が上がります。
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AIで安くなったのは、コードを書く作業です。価値は、何をつくるかを決める判断・品質を保証する検証・チームで負う責任へ移りました。レビューの形骸化が示すとおり、いま詰まっているのは「書く」工程ではなく「確かめる」工程です。
次の一手は2つ。まず自分でAIエージェントを使い込み、できることとできないことを肌で知る。次に、テストと評価の仕組みをチームで整え、検証の力を開発速度に追いつかせる。
A.5月には、UberがAI予算の年間枠を使い切ったと話題になるほど懸念が広がりました。Orosz氏によると、9月までに多くの大企業がオープンモデルの導入や賢いルーティングでトークン単価を約半分に抑え、総額を横ばいに保っています。
A.Orosz氏の助言は、人のマネジメントの比重を一旦下げ、手を動かす側に寄せること。現場のエンジニアも経営側も、今はマネジメントをそれほど求めていません。
A.何をつくるかを決める判断、品質を保証する検証、チームで負う責任が重要になります。AIエージェントを自ら使って能力と限界を把握し、チームでテストと評価の仕組みを整えることが求められます。